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#01-3 街描き
街にらくがきできるサービス、街描き
「自由に街を描こう」そんな一行と、ビルの壁に浮かぶ鮮やかな落書き。いつもの街の景色が少しだけ変わる。街描きは、街にARで絵を描けるサービス。伝言を残したり、空をキャンバスにしたり、見えない仲間と合作したり、街描きは、あなたの創作活動への一歩を後押しします。わたしがこのサービスを知ったのは、道を歩きながらこの広告に出会ったことだった。目薬型のARデバイス、AugmaDropが登場してから、私たちはそれを通じてさまざまなサービスを使い分けている。街描きはどうやらSSS(ソーシャル・セパレーション・サービス)上の世界によって見える景色も、描き方もどうやらちがうらしい。 私も街描きをしてみることにした。
あたらしい世界がひらく
元々私がいたのは、闘争世界だった。この世界での街描きは議論を交わすように誰かが描いたものをすぐに別の誰かが消して、また上から殴り描きをする。私も議論をしているようで最初は楽しかったけど、自分のものが残らないことにフラストレーションがたまるようになってきた。数日後、目薬デバイスを通して見えた世界は、一変していた。ビルの壁には色とりどりの絵が、互いに干渉せず心地よく並んでいる。どうやら私は共創世界にやってきたみたいだ。電線の上に座る小さな動物、歩道の端に描かれたやさしい生き物。無理をせず、そこにちょうどいい距離感で存在している。「ここなら、私も自分のペースで描けそうだ」胸がふわっと軽くなり、久しぶりにウキウキする気持ちが湧き上がる。今日の散歩は長くなりそうだ。
街の気づきに描きこむ
歩いていると、壁のひび割れが、植物の茎のように伸びて見えた。私はそこに葉っぱを描き足す。街の中のちょっとした「偶然」に気づいて、そこに小さなアンサーを返すように描く。「やっぱり、こういうのって楽しいな」ただの景色が、自分の街描きで物語を持ちはじめる。誰が見るかはわからないけど 自分が楽しいからそれでいいんだ。
街描きで生まれるゆるやかな人とのつながり
散歩を続けていると、誰かが描いた人の絵を目にする。「この線、アパートの区分けみたいだな」わたしは違う枠にバレリーナや、動物を書き足した。「きっと、この絵を描いた人も想像してなかっただろうな」知らない誰かの発想と、自分の街描きが重なって、一枚の絵が生まれていく。見えないはずの人とのつながりが、この場所にちゃんとある気がした。今日私が書いた街描きにもだれか応えてくれるかな。
創作の余韻が心を満たす
散歩から戻り、夕方になると街はいつもの姿に戻っていた。それでも、私には違って見える。さっき顔に見えた壁のシミや、植物に変わったひび割れが、まだ鮮明に頭に残っている。「また明日も、どこかに見つけられるかもしれないな」気づきに返事をするような街描きは、日常をちょっと面白くする。そしてその余韻は、創作の小さな火を絶やさず灯し続けてくれる。