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#02-3 電力断食

断食day1 0:00 | パワースポット詣

祖先と会話できる日常 10月第三週の深夜0:00時、今年もインフラ断食が始まる。国家安全に関わる一部を除き、電力と通信が停止される。人々は慣例として最寄りの発電所へ向かい、電気という不可視の恩恵に感謝を捧げる。行燈に照らされた参道を歩き、月光に浮かぶ風力発電機のシルエットを眺めることで、日常では意識されないインフラの存在と、生活との関係を身体的に捉え直す時間となる。

断食day2 19:00 | 夜伽の儀

インフラ断食二日目の夜、地域住民は校区の学校の校庭に集まる。焚火は光源であり、調理設備であり、犯罪の抑止力でもある。皆で炊き出しを行い、食事を共有しながら会話が生まれる。自警団の巡回や防災訓練の機能も含め、この集まりは非常時の生活を確認する場として機能する。同時に、火を囲む構造そのものが、人と人との関係性を再編成する装置となっている。

断食day3 22:00 | 漆黒の街並みとペガサス座

最終日。東京ではスカイタワーに登ることが人気のアクティビティのひとつ。普段は街の光に消されて見えない満天の星空を東京で見るために皆が自らの足で展望台をめざす。断食3日目、街の空気は澄み、光が消え、普段は見えない星々や秋の大四辺形が都市の上空に現れる。久しぶりに使った紙幣と紙のチケットを握りしめながら満天の星空を見上げた。

断食day4 0:00 | 御来電

終日の深夜、日付が変わると同時に眼下の街並みに一斉に光が灯り始める。同時に断食明けを祝う大輪の花火が打ち上げられる。明るさを取り戻した街並みを見て、スカイタワーの展望台は歓喜に包まれる。歓声の中、父と娘の会話が聞こえた。『元に戻っただけなのにすごくうれしい』娘の言葉に、父は答える。『それが感謝ってやつだよ。自然と先人が作ってくれた環境で、私たちは生かされてるんだ。』彼女の先人や自然への感謝は他者への共感を育み、そしてまだ見ぬ子孫へと受け継がれていくだろう。