B1. 害虫菌獣の「害」がなくなる日

何をリジェネレイトする?

生物との共生関係

その理由

人と生物は、なぜなぜ互いに尊重し合う関係を築けないのか?
過去を紐解き、関係性を見つめ直すことから、 より良いことが始まるかもしれないと考えたから。

生物との共生関係の変遷 ――― 過去・現在・未来

過去: パートナーからペットへ

狩猟採集時代から、動物は狩猟の対象としてだけでなく、狩りのパートナーや労働力として共生関係にあり、そこから愛玩動物としてのペットも派生した。

現在: 動物の権利と生態系保全

人口増加と生活水準の向上によりペットブームが起こり、ペットの権利が問題と認識されるようになった。
また、気候変動や持続可能性への取り組みが強化され、生態系管理・保全が重要な課題となっている。

きざし: 新・ノアの箱舟

宇宙開発が活発になり、火星への移住の構想や、アクアポニックスなどの閉鎖生態系の研究開発が進んでいる。
地上では、ペットが心身ともに健康で幸せな状態を目指す取り組みが始まってきている。

新しい世界観: 宇宙と地球の相互進化

動物との共生関係の価値観は、宇宙開拓時代における必要性から再度繰り返され、
宇宙と地球の相互に影響しながら進展することで、人間以外の動物も幸せに過ごせる環境が実現するようになった。

生物との共生関係の変遷 ――― 害菌虫獣との共生

過去: パートナーからペットへ

伴侶となる動物がいる一方で、害虫獣は農作物や人に危害を与える存在として忌み嫌われた。
駆除のために、自然の天敵を利用するなどの工夫が行われ、クマやイナゴなどは、食用として利用された。

現在: 動物の権利と生態系保全

殺虫剤や電気柵などが用いられて、駆除や住み分けを行っている。害虫獣管理の多様なアプローチが模索され、
外来種の防除や、獣との共生関係は時に議論の対象になっている。

きざし: 新・ノアの箱舟

食糧危機やカーボンニュートラルに向けた対応のなかで昆虫食の見直しや微生物のエネルギー活用が研究されている。
宇宙開発においてはアクアポニックスが、宇宙での閉鎖的な生態系を支える技術のひとつとして期待されている。

新しい世界観: 宇宙と地球の相互進化

宇宙開拓時代の閉鎖的生態管理技術の進展や、生態系全体を保全する意識の高まりの倫理観に、
人間の果てしない経済活動を組みこんだとき、菌や害虫獣との、新たな共生関係が生まれるかもしれない。

キャプション-1 孤独な宇宙で愛でるウェアラブルペット

宇宙飛行士のリナは、広大な宇宙で孤独な任務に就いていた。狭い宇宙船のなかで、彼女の唯一の癒しは、腕時計型ウェアラブルペット。リナの腕に巻かれた小さなデバイスで、微生物の温かい振動と優しい光で彼女を慰めてくれる。体内では害のある危険な病原体の一種だが、時計の中では安全。その希少性と特性から、ペットとして飼われるようになってきた。リナの心拍数を感知し、ストレスを感じると優しい音楽を流してくれる。リナはペットと共に過ごす時間に、生命の温もりを感じ、孤独な宇宙でも愛と絆を感じることができた。

キャプション-2 住み分けから意識下の共生へ

かつてゴキブリは、人々に忌み嫌われ、罪はないのに駆除される悲しい存在だった。しかし、時代は変わり、昆虫の糞や死骸は粉砕され、貴重な肥料として活用されるようになった。家庭用昆虫誘引装置は、旧来の駆除用品の代替として、直接目に触れずに誘引して肥料化する装置だが、宇宙開発の副産物としてホームセンターでよく見かけるようになった。昔はゴキブリが見えないように駆除・肥料化する製品が主流だったが、近年ではゴキブリが人間にもたらす恩恵から、鑑賞用としても扱われるようになった。根強い人気のカブトムシと並んで、小学生の夏休みの自由研究のテーマにされることも多くなってきた。

キャプション-3 ロボットを介した 獣と人間の折り合い

宇宙開発で使用されていた大型歩行ロボットは汎用化され、建設や林業に利用されるようになった。マタギロボットは、古来のマタギ(狩猟者)の知恵と宇宙開発で培ったロボット技術を融合させ、獣の行動を把握、監視し、人間に常に知らせることで、危険な出逢いを未然に防ぐ役割を果たす。ロボットは、絶滅したニホンオオカミの代わりとしても機能し、時にクマやシカ狩りを行い、最近は食肉として安定供給できるようになってきた。失われた文化や戻らない生態系は、あたかも義歯や義足のように、機械がツギハギ補完して、日々の暮らしに取り込まれるようになってきた。

キャプション-4 果てしない欲望と持続可能性のマリアージュ

未来の都市、持続可能性の名の下に奇妙な食文化が生まれている。レストラン「エコ・デライト」は、カラス肉で作られたユッケが名物。シェフは、都市のゴミを漁るカラスを捕獲し、丹念に調理することで、フードロスや、害鳥被害にまつわる課題を接続して、それらの円満解決に役立てている。カラスは、濃厚な旨味と独特の風味が広がる味といわれ、捕獲や調理に手間がかかることから高値で取引されている。サギの雛肉や、ムクドリと並んで、この店では人気が出ている。